子犬をお迎えすると、日々の成長に驚かされることばかりです。特に、犬の乳歯が永久歯へと生え変わる時期は、多くの飼い主さんが気になる大切なイベントの一つではないでしょうか。愛犬のお口の中にグラグラした歯を見つけて、「犬の乳歯が生え変わる順番はどうなっているの?」「何か特別なケアは必要?」といった疑問や不安を感じるかもしれません。
この記事では、子犬の歯の生え変わりについて、その時期や順番、よくあるトラブルへの対処法、そして知っておきたい病気まで、幅広く解説します。正しい知識を身につけて、愛犬の健やかな成長をサポートしましょう。
この記事でわかること
- 犬の乳歯が生え変わる具体的な時期と順番
- 生え変わり時期によくあるトラブルと家庭での対処法
- 注意すべき歯の病気と動物病院を受診する目安
- 子犬のうちから始めたい歯磨きの習慣づけのコツ
犬 乳歯 生え 変わり 順番と時期の基礎知識
このセクションで解説する内容
- 子犬の歯が生え変わる時期はいつから?
- 乳歯と永久歯の本数と見分け方
- 抜けた歯を飲み込んでも大丈夫?
- 歯ぐきからの出血は心配ない?
- グラグラする乳歯は抜いていい?
- 食欲不振になったときの対処法
子犬の歯が生え変わる時期はいつから?
犬の歯が乳歯から永久歯に生え変わる時期は、おおよそ生後4ヶ月から6ヶ月頃にかけてです。もちろん、犬種や個体によって多少の差はありますが、一般的にはこの期間に生え変わりが始まります。
多くの場合、小型犬は大型犬よりも少し早く生え変わりが始まる傾向にあります。生後2~3週間頃から生え始めた乳歯が、生後6~7ヶ月頃には全て永久歯に生えそろうのが一般的なスケジュールです。この歯の生え変わりは、犬の一生で一度きりの大切な過程となります。
WEBライターの視点
「うちの子はまだかな?」と心配になるかもしれませんが、多少の時期のズレはよくあることです。焦らず、日々のコミュニケーションの中でお口の中をチェックする習慣をつけておくと良いでしょう。
乳歯と永久歯の本数と見分け方
子犬の乳歯と成犬の永久歯では、本数や形状に明確な違いがあります。それぞれの特徴を知っておくと、愛犬のお口の状態を把握しやすくなります。
まず、乳歯は全部で28本、永久歯は42本です。永久歯になると、食べ物をすり潰す役割を持つ「後臼歯」などが加わるため、本数が多くなります。
乳歯と永久歯の主な違い
- 本数:乳歯は28本、永久歯は42本と、永久歯の方が14本多くなります。
- 形状と大きさ:乳歯は永久歯に比べて小さく、先端が鋭く尖っているのが特徴です。一方、永久歯は乳歯よりも大きく、頑丈でしっかりしています。
- 色:乳歯は少し青みがかった白色をしていることがあります。
見分ける際の最も分かりやすいポイントは、やはり歯の大きさと本数です。生え変わりの時期には、口の中に小さい乳歯と、その内側(上顎の犬歯は前方)から生えてくる大きい永久歯が混在している様子が観察できることもあります。
歯の種類 | 乳歯 (合計28本) | 永久歯 (合計42本) |
---|---|---|
切歯 | 上顎6本 / 下顎6本 | 上顎6本 / 下顎6本 |
犬歯 | 上顎2本 / 下顎2本 | 上顎2本 / 下顎2本 |
前臼歯 | 上顎6本 / 下顎6本 | 上顎8本 / 下顎8本 |
後臼歯 | 0本 | 上顎4本 / 下顎6本 |
●乳歯の名前と生えかわる時期の目安 日本臨床矯正歯科医会
抜けた歯を飲み込んでも大丈夫?
結論から言うと、抜けた乳歯を愛犬が飲み込んでしまっても、基本的には問題ありません。
抜けた歯は小さく、消化されることはありませんが、フードなどと一緒に食道や胃を通り、数日中には便と一緒に自然に排泄されます。多くの飼い主さんが経験することであり、過度に心配する必要はないでしょう。
むしろ、床に落ちている抜けた歯を記念に取っておく飼い主さんもいるくらいです。もし愛犬が歯を飲み込んだ後に元気がない、嘔吐を繰り返すなど、普段と違う様子が見られる場合は、他の原因が考えられるため動物病院に相談してください。
歯ぐきからの出血は心配ない?
乳歯が抜ける際には、歯ぐきから多少の出血が見られることがあります。これは、歯が抜けるという生理現象に伴う自然なことなので、少量の出血であれば心配いりません。
出血はすぐに止まることがほとんどです。おもちゃやタオルに少量の血が付着していることで、初めて出血に気づくこともあるでしょう。
こんな時は動物病院へ
通常の出血はすぐに止まりますが、以下のような状況が見られる場合は、歯周病や他の病気の可能性も考えられます。様子を見ずに、かかりつけの動物病院を受診しましょう。
- 5分以上ダラダラと出血が続く場合
- 明らかに量が多いと感じる場合
- 歯ぐきが異常に腫れている、または赤くなっている場合
グラグラする乳歯は抜いていい?
愛犬の歯がグラグラしているのを見ると、気になってつい触りたくなったり、早く抜いてあげたいと思ったりするかもしれません。しかし、グラグラしている乳歯を無理に抜くのは絶対にやめましょう。
乳歯は永久歯が下から押し上げる力によって、歯の根っこ(歯根)が自然に溶けて抜け落ちる仕組みになっています。無理やり抜こうとすると、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります。
- 歯根が歯ぐきの中に残ってしまい、炎症や感染の原因になる
- 歯ぐきを傷つけてしまい、強い痛みや出血を引き起こす
- 犬が「口を触られるのは痛いことだ」と学習してしまい、今後の歯磨きなどのお口ケアを嫌がるようになる
歯の生え変わりは自然な生理現象です。飼い主さんは焦らず、自然に抜け落ちるのを見守ってあげるのが一番です。
食欲不振になったときの対処法
歯の生え変わり時期には、一時的に食欲が落ちたり、ごはんの食べ方がぎこちなくなったりすることがあります。これは、歯や歯ぐきの違和感、むずがゆさ、痛みなどが原因で「食べたくても食べにくい」状態になっているためです。
もし愛犬の食欲がないように見えても、元気がある場合は、食事を食べやすく工夫してあげると良いでしょう。
食欲不振時の食事の工夫
愛犬がごはんを食べやすくなるように、以下のような工夫を試してみてください。
- 普段のドライフードをぬるま湯でふやかし、柔らかくして与える
- ウェットフードやペースト状のフードを一時的に利用する
- 茹でたささみやお野菜を細かく刻んでトッピングする
これらの工夫は、あくまで生え変わり時期の一時的な対応です。永久歯が生えそろい、お口の中の状態が安定したら、また元の食事に戻していきましょう。ただし、食欲不振とともに元気もない、下痢や嘔吐があるといった場合は、別の病気の可能性もあるため、速やかに獣医師の診察を受けてください。
犬 乳歯 生え 変わり 順番順番で注意すべきこと
このセクションで解説する内容
- 噛む行動が増加する理由と対策
- 生え変わり時期に口臭がひどくなる理由
- 乳歯遺残という病気に注意
- 不正咬合のリスクと早期発見
- 歯磨きを始める最適な時期とは
噛む行動が増加する理由と対策
歯の生え変わり時期の子犬は、歯ぐきがむずがゆかったり、違和感があったりするため、しきりに何かを噛みたがるようになります。これは「噛み癖がひどくなった」のではなく、不快感を和らげようとする本能的な行動です。
この行動自体は成長過程における正常なものですが、家具やスリッパ、電気コードなどを噛んでしまうと、物の破損だけでなく、犬自身の安全にも関わります。そのため、適切な対策が必要です。
噛む行動への対策
噛んでも良いものといけないものを教え、欲求を満たしてあげることが大切です。
- 噛むためのおもちゃを与える:ゴム製やロープ製など、子犬が安全に噛めるおもちゃを用意しましょう。硬すぎるおもちゃは歯を傷つける可能性があるので避けてください。
- 噛まれたくないものは隠す:家具の脚には苦み成分のあるスプレーを吹きかけたり、電気コードにはカバーを付けたりして、物理的に噛めないように工夫します。
この時期の噛む行動は一時的なものであることが多いです。叱るのではなく、噛んでも良いおもちゃに興味を誘導して、たくさん褒めてあげることで、安全にこの時期を乗り越えましょう。
生え変わり時期に口臭がひどくなる理由
歯の生え変わり時期に、一時的に愛犬の口臭が強くなったと感じることがあります。これは、抜けた乳歯の穴に食べかすや雑菌が溜まりやすくなることや、歯ぐきからの出血が口内細菌によって分解されることなどが原因です。
永久歯が生えるために歯ぐき(タンパク質が豊富な組織)が溶かされる過程も、口臭の一因とされています。これも成長に伴う生理的な現象なので、過度な心配は不要です。
ただし、生え変わりが終わっても口臭が改善されない、または、あまりに強い臭いが続く場合は、歯周病や他の病気のサインかもしれません。気になる場合は、一度動物病院で相談してみることをお勧めします。
乳歯遺残という病気に注意
生え変わりの時期で最も注意したいトラブルの一つが「乳歯遺残(にゅうしいざん)」です。
これは、永久歯が生えてきたにもかかわらず、抜けるべき乳歯が抜けずに残ってしまう状態を指します。特に、トイ・プードルやチワワ、ミニチュア・ダックスフンドなどの小型犬で多く見られる傾向があります。
乳歯遺残を放置するリスク
乳歯遺残を放置すると、お口の中に様々な悪影響を及ぼします。
- 歯並びの悪化(不正咬合):永久歯が正しい位置に生えるのを邪魔してしまい、歯並びが悪くなる原因になります。
- 歯周病のリスク増加:乳歯と永久歯が密着して並ぶため、隙間に歯垢や歯石が非常に溜まりやすくなり、若いうちから歯周病を発症するリスクが高まります。
乳歯遺残は自然に抜けることが少ないため、基本的には動物病院で抜歯処置が必要です。多くの場合、生後6ヶ月以降に行う避妊・去勢手術の際に、一緒に麻酔をかけて抜歯します。永久歯が生えそろっても乳歯が残っている場合は、必ず獣医師に相談しましょう。
不正咬合のリスクと早期発見
「不正咬合(ふせいこうごう)」とは、歯の噛み合わせが正常ではない状態を指します。前述の乳歯遺残が原因で起こることが多いですが、遺伝的に顎の骨の長さが異常なことなども原因となります。
不正咬合は、単に見た目の問題だけではありません。噛み合わせが悪いことで、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 食べ物をうまく噛み砕けない(咀嚼障害)
- 特定の歯が口の中の粘膜や歯ぐきに当たり、痛みや炎症を引き起こす
- 歯並びのせいで歯垢が溜まりやすく、歯周病になりやすい
歯の生え変わりの時期は、愛犬の口の中を定期的にチェックし、「乳歯と永久歯が2本並んで生えている」「歯が変な方向を向いている」などの異常がないか確認することが、不正咬合の早期発見につながります。早期に対処することで、矯正などの治療が可能な場合もあります。

歯磨きを始める最適な時期とは
愛犬のお口の健康を生涯にわたって維持するためには、毎日の歯磨きが欠かせません。その習慣づけは、歯の生え変わりが始まる子犬の時期からスタートするのが理想的です。
ただし、いきなり歯ブラシを口に入れると、怖がったりおもちゃだと思って遊んでしまったりすることがあります。まずは、お口周りを触られることに慣れさせることから始めましょう。
子犬の歯磨きトレーニングのステップ
以下の手順で、焦らず少しずつ進めていきましょう。一つクリアできたらたくさん褒めてあげることが成功の秘訣です。
- ステップ1:お口の周りや唇を優しく触ることに慣れさせる。
- ステップ2:唇をめくり、指で歯や歯ぐきに優しく触れることに慣れさせる。
- ステップ3:指にガーゼや歯磨きシートを巻き、歯の表面を優しくこする。
- ステップ4:子犬用の小さな歯ブラシを使い、まずは前歯から磨いてみる。
歯ぐきから出血している時や、痛がっている様子がある時は無理に行わないでください。お口のチェックは、乳歯遺残などの病気の早期発見にも繋がります。楽しくコミュニケーションを取りながら、歯磨きの習慣化を目指しましょう。
順番の総括とケア
最後に、この記事で解説した犬の乳歯が生え変わる順番やケアに関するポイントをまとめます。
- 犬の乳歯は生後4ヶ月から6ヶ月頃に永久歯へ生え変わる
- 生え変わりの順番は一般的に切歯、犬歯、臼歯の順で進む
- 乳歯は28本、永久歯は42本と本数が異なる
- 抜けた乳歯を飲み込んでしまっても基本的には問題ない
- 乳歯が抜ける際の少量の出血は生理的な現象である
- グラグラした乳歯を無理に抜くのは絶対に避けるべき
- 食欲が落ちた際はフードをふやかすなどの工夫で対応する
- 歯ぐきのむずがゆさから噛む行動が増えることがある
- 噛む欲求を満たすため安全なおもちゃを与えることが有効
- 生え変わり時期の一時的な口臭は心配しすぎなくて良い
- 永久歯が生えても乳歯が残る乳歯遺残に注意が必要
- 乳歯遺残は小型犬に多く見られ抜歯が必要になることが多い
- 不正咬合は将来の歯周病リスクを高めるため早期発見が重要
- 歯磨きの練習は生え変わり時期から始めるのが理想的
- 口周りを触られることから少しずつ慣れさせることが大切