散歩中に犬のリードが長すぎると感じたり、見知らぬ犬の伸びるリードが怖いと思ったりした経験はありませんか。ドッグランではない普通の公園での使用や、場所によっては伸縮リードが禁止されているケースもあり、犬のロングリードは迷惑だと感じる人がいるのも事実です。実際に、犬のロングリードに起因する事故や、伸びるリードが関連する事故も報告されており、飼い主としては肩身の狭い思いをすることもあるかもしれません。また、犬のリードの長さに関する法律や条例が具体的にどうなっているのか、はっきりと知らない方も多いのではないでしょうか。この記事では、ロングリードや伸縮リードがなぜ迷惑だと思われてしまうのか、その理由と具体的な危険性、そして周囲に配慮した安全な使い方まで、網羅的に解説します。
この記事でわかること
- ロングリードが迷惑だと思われる具体的な理由
- ロングリードに関連する事故事例と危険性
- リードの長さに関するルールや法律の有無
- 周囲に配慮したロングリードの安全な使い方
なぜ「犬のロングリードは迷惑」と言われるのか
- 犬のリードが長すぎると危険
- 犬のロングリードによる事故例
- 伸びるリードが引き起こす事故
- 周囲に「伸びるリードは怖い」と感じさせる
- 飼い主のコントロールが利かない
犬のリードが長すぎると危険

結論から言うと、犬のリードが長すぎる状態は非常に危険です。飼い主の目が届きにくくなるだけでなく、咄嗟の事態にすぐ対応することが困難になります。
例えば、犬が車道に飛び出しそうになったり、他の人や犬に急に接近しようとしたりした際、リードが長いとその分、制止するまでの時間がかかってしまいます。このわずかなタイムラグが、取り返しのつかない事故につながる可能性があるのです。
制御不能のリスク
リードが長いほど、犬を制御する力は弱まります。特に力の強い大型犬や、興奮しやすい性格の犬の場合、飼い主が引きずられて転倒する危険性も高まります。
また、長いリードは物陰や障害物に引っかかりやすく、犬がパニックを起こす原因にもなります。犬自身の安全を守るためにも、市街地や人通りの多い場所ではリードを短く持つことが不可欠です。
犬のロングリードによる事故例
犬のロングリードが原因で起こる事故は、決して他人事ではありません。実際に、以下のような事例が報告されています。
歩行者や自転車の転倒事故

最も多いのが、歩行者や自転車がリードに気づかず、引っかかって転倒する事故です。特に、夕暮れ時や夜間の暗い時間帯では、細いリードは非常に見えにくくなります。
道の端と端に飼い主と犬がいる状況で、その間を人が通り抜けようとしてリードに足を引っかけ転倒し、大怪我につながったケースもあります。自転車の場合、転倒の衝撃はさらに大きく、命に関わる事態にもなりかねません。
加害者になってしまう可能性を常に意識する必要があります。万が一、ご自身の愛犬のリードが原因で他人に怪我をさせてしまった場合、飼い主は過失傷害罪に問われる可能性があります。
伸びるリードが引き起こす事故
ボタン一つで長さを調節できる「伸びるリード(伸縮リード)」は非常に便利ですが、その特性ゆえの事故も多発しています。
リードによる火傷(摩擦熱傷)
伸びるリードの紐(コード)は細いものが多く、高速で伸びたり縮んだりします。この紐が人の肌に触れると、摩擦によって火傷のような切り傷(摩擦熱傷)を負うことがあります。特に、半ズボンやスカートなど肌が露出している夏場は注意が必要です。
リードのロック機能の故障・誤操作
犬が急にダッシュした際に慌ててロックボタンを押そうとしても、間に合わなかったり、うまく作動しなかったりするケースがあります。また、長年使用していると内部のゼンマイやロック機構が劣化し、突然ロックが効かなくなることも考えられます。定期的な点検や買い替えも重要です。
平紐(テープ)タイプの伸びるリードは、丸紐(コード)タイプに比べて肌に触れた際のダメージは少ないと言われていますが、危険性に変わりはありません。どちらのタイプでも、取り扱いには細心の注意が必要ですね。
周囲に「伸びるリードは怖い」と感じさせる

犬を飼っていない人や、犬が苦手な人にとって、自由に動き回る犬はそれだけで恐怖の対象となり得ます。たとえ飼い主が「うちの子は大丈夫」と思っていても、その気持ちは相手には伝わりません。
リードが最大限に伸びた状態で犬が自分の足元に近づいてくると、「噛まれるのではないか」「飛びつかれるのではないか」と強い不安を感じさせてしまいます。特に、小さなお子さんを連れている親御さんからすれば、その恐怖は計り知れません。
公共の場では、自分たちが思っている以上に周囲から見られているという意識を持つことが大切です。愛犬が社会から受け入れられるためにも、周りの人々への配慮を忘れてはいけません。
飼い主のコントロールが利かない
結局のところ、ロングリードや伸びるリードが問題なのではなく、それを使う飼い主が愛犬を適切にコントロールできていないことが根本的な原因と言えます。
リードは、単に犬と人を繋ぐ紐ではありません。飼い主の意志を犬に伝え、犬の安全を確保するための重要なコミュニケーションツールです。
リードを長く伸ばした状態は、実質的に「放し飼い」と変わらない状況です。拾い食いや他の犬への攻撃、マーキングなど、あらゆるトラブルの原因となり得ます。リードを持っているだけで満足せず、常に愛犬の動きに注意を払い、危険を予測して行動することが飼い主の責任です。
犬のロングリードが迷惑になる本当の原因
- 犬のリードの長さに法律はある?
- 公園での犬のロングリード使用
- 伸縮リードが禁止される場所も
- リードの長さだけの問題ではない
- 本来は上級者向けのトレーニング用品
- 「犬のロングリードは迷惑」と思われない使い方
犬のリードの長さに法律はある?
「犬のリードの長さ」を具体的に「〇メートル以下」と定めた法律は、現在の日本にはありません。しかし、多くの自治体では条例によって飼い主の遵守事項が定められています。
例えば、東京都の「動物の愛護及び管理に関する条例」では、以下のように定められています。
東京都動物の愛護及び管理に関する条例 第8条
犬の飼い主は、その犬を逸走させないため、次の各号に掲げる場合を除き、その犬を綱、鎖等で確実につないでおかなければならない。
ここでのポイントは「確実につないでおく」という部分です。これは、単に繋がっていれば良いという意味ではなく、「常に犬を制御できる状態を保つこと」を意味しています。つまり、リードが長すぎて制御不能な状態は、条例違反と見なされる可能性があるのです。
お住まいの自治体の条例を確認し、飼い主としての義務を正しく理解しておくことが重要です。
公園での犬のロングリード使用

公園は犬の散歩でよく利用される場所ですが、使用ルールは公園ごとに異なります。
多くの一般的な公園では、ドッグラン施設を除き、犬を放すこと(ノーリード)は禁止されています。前述の通り、長すぎるリードは実質的なノーリード状態と見なされるため、ロングリードの使用自体が問題視されるケースも少なくありません。
他の公園利用者、特にボール遊びなどをしている子供たちや、犬が苦手な人への配慮は不可欠です。ロングリードを使用したい場合は、周囲に人がいない、開けた場所で、時間帯を選んで使用するなどの工夫が求められます。
伸縮リードが禁止される場所も
近年、トラブル防止の観点から、伸縮リードやロングリードの使用を明確に禁止する施設が増えています。
場所 | 主な理由 |
---|---|
ドッグラン | 他の犬とリードが絡まり、喧嘩や事故の原因になるため。 |
ペット同伴可の商業施設・カフェ | 狭い空間で他の客や商品に迷惑をかけるリスクがあるため。 |
一部の公園や観光地 | 他の利用者とのトラブル防止や、景観・自然保護のため。 |
お出かけの際は、事前に施設の公式サイトなどで利用規約を確認することがマナーです。「知らなかった」では済まされないトラブルに発展しないよう、しっかりとルールを守りましょう。
リードの長さだけの問題ではない
ここまでロングリードの危険性について述べてきましたが、重要なのは、問題の本質が単に「リードの長さ」にあるわけではないということです。
たとえ短いリードを使っていても、飼い主がスマートフォンを見ながら歩いていたり、犬の行動に無関心だったりすれば、事故は起こり得ます。逆に、ロングリードであっても、飼い主が優れた技術と注意力を持って周囲に配慮しながら使えば、安全性は高まります。
結局のところ、問われているのは飼い主自身のモラルとスキルです。リードはあくまで道具であり、その道具をどう使うかが最も重要になります。
本来は上級者向けのトレーニング用品
実は、ロングリードや伸縮リードは、もともとプロの訓練士などが使うトレーニングツールとして開発された背景があります。
家庭犬しつけインストラクターの西川文二氏によると、伸びるリードは「中〜上級のトレーニングを積んだ犬と飼い主さん用のアイテム」と位置づけられています。(参照:いぬのきもちWEB MAGAZINE)
本来の正しい使い方
- 安全な場所の確保:周囲に人や犬がいない広い公園や河川敷などで使用する。
- トレーニングでの活用:離れた場所からの「マテ」や「オイデ(呼び戻し)」といった、高度なトレーニングを行うために使用する。
つまり、どんな状況でも確実に呼び戻しができる(オイデが完璧な)犬が、ノーリードに近い環境でさらにトレーニングを積むために使うのが、本来の目的なのです。
「犬が引っ張るから、普通のリードだと大変で…」という理由で安易に伸びるリードを選ぶのは、実は目的と手段が逆転してしまっているんですね。まずは、通常のリードで上手に散歩できるトレーニングが先決です。
「犬のロングリードは迷惑」と思われない使い方
最後に、周囲に迷惑をかけず、安全にロングリードを活用するためのポイントをまとめます。これは、TPO(時・場所・場合)をわきまえることに他なりません。

使い分けの徹
最も重要なのは、場所に応じたリードの使い分けです。
- 市街地・人通りの多い場所:1.5m程度の通常のリードを短めに持つ。
- 広くて見通しの良い公園など:周囲に人がいないことを確認した上で、ロングリードに付け替える。
移動中は通常のリードを使用し、目的地に着いてからロングリードに付け替えるという一手間が、トラブルを未然に防ぎます。
常に周囲を確認する
ロングリード使用中は、常に360度、周囲の状況に気を配りましょう。リードが伸びる最大範囲内に、人や犬、自転車などが近づいていないかを常に確認してください。
危険を予測したら、すぐにリードを短くロックするか、犬を呼び寄せて隣につける(ヒール)などの対応が必要です。この咄嗟の判断と操作ができるスキルが、ロングリードを使う上での最低条件と言えるでしょう。
まとめ:安全な散歩は飼い主の意識から
- ロングリードや伸縮リードは「迷惑」だと思われることがある
- 原因はリード自体より、飼い主の使い方やモラルにあることが多い
- リードが長すぎると咄嗟の対応が遅れ、事故のリスクが高まる
- 歩行者や自転車の転倒、リードによる火傷などの事故事例がある
- 犬が苦手な人は、自由に動く犬に恐怖を感じることを理解する
- リードの長さを直接定めた法律はないが、自治体の条例で制御義務が定められている
- 公園や施設によってはロングリードや伸縮リードの使用が禁止されている
- ロングリードは本来、トレーニングを積んだ上級者向けの道具である
- 「オイデ」が完璧にできることが、ロングリードを使う一つの目安となる
- 市街地では短いリード、安全な広場ではロングリードと使い分けることが重要
- 使用中は常に周囲の安全を確認し、危険を予測する
- 愛犬を制御できない状態は、実質的な「放し飼い」と同じだと認識する
- 便利な道具も、使い方を間違えれば凶器になり得る
- トラブルが起きた場合、飼い主が法的責任を問われる可能性がある
- 全ての人が犬好きではないという視点を持ち、周囲への配慮を忘れない